会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
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zoom RSS 公認会計士高田直芳:三菱重工業の商船事業はなぜ失敗したのか

<<   作成日時 : 2015/10/08 01:00   >>

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三菱重工業の商船事業は
なぜ、失敗したのか

決定版ほんとうにわかる管理会計&戦略会計
第2版 補足説明



現代の管理会計や経営分析には「重大な瑕疵」があり、それに基づいて経営戦略を展開すると見事に失敗することを、拙著や本ブログで再三、警告してきました。

その1つの例を、三菱重工業の商船事業に垣間見ることができます。

現代の管理会計や経営分析が、企業の経営戦略を如何に誤らせるかを、同社の事例で検証してみます。

2015年10月1日付で、三菱重工業の商船部門が分社化され、ガス運搬船の建造に特化した三菱重工船舶海洋が発足しました。

その新会社の社長は、過去に選択した戦略の失敗を認め、次のように述べています。
【資料1】日経産業新聞2015年10月6日

固締まりで人数を絞り、協力会社を使った結果、設計が定まらず今の非常に厳しい事態になった。


上記【資料1】にある「固締まり」とは、三菱重工業のローカル用語であり、「固定費削減」のこと。

協力会社とは外注先のことであり、「協力会社を使う」とは、外注費=変動費へシフトすることです。

したがって、【資料1】は、「固定費を減らして、変動費へ切り替えたが、その経営戦略が失敗した」という意味になります。


なぜ失敗したのか。
これは、いくつかの面から論証することができます。

まず、現代の管理会計では、限界利益という概念を用います。
貢献利益や変動利益とも呼ばれ、【資料2】の式で表わされます。
【資料2】\[\displaystyle \large \left( \begin{array}{c} 限界利益 \\ または \\ 貢献利益 \\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{l} 損益計算書 \\ 上の利益 \\ \end{array} \right) +(固定費) \]

ところで、次の拙著237頁では、付加価値という概念について、いく通りかの定義を紹介しています。
決定版 ほんとうにわかる管理会計&戦略会計
高田 直芳 2014年10月 第2版
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そのうちの1つについて、次のように定義しています。
【資料3】
    付加価値
      =(損益計算書の利益)+(人件費)+(賃借料)+(金融費用)+(減価償却費)+(租税公課)

上記【資料3】にある人件費から租税公課までは、売上高の増減に比例しないコストですから、これらは固定費であることがわかります。

以上より、【資料2】の限界利益の正体は、【資料3】の付加価値であり、したがって、次の式が成り立ちます。
【資料4】
    付加価値=(損益計算書の利益)+(固定費)

上場企業の役員や経営幹部で、【資料4】の式を理解していない人が、意外と数多く存在します。

理解していないからこそ、安易な固締まり(固定費削減)に取り組んでしまうのです。

その結果、【資料4】の右辺第2項の固定費を削減することにより(外注費=変動費を増やすことにより)、付加価値が減ってしまうのです。

上記【資料1】で、「今の非常に厳しい事態になった」のは当たり前。
何をいまさら、という話なのです。


その固締まり(固定費削減)は、現代の管理会計が説くCVP分析(損益分岐点分析)に基づいて行なわれます。

管理会計や経営分析を学んだ者が100万人いるとするならば、そのうちの99万9999人は「CVP分析は絶対的に正しい」と主張する理論です。

残念な話ではありますが、99万9999人が「絶対的に正しい」と信じているCVP分析については、「理論上の瑕疵」があり、企業実務でまったく役に立たないことを、次の受賞論文で証明しました。
【資料5】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

CVP分析のどこに、「理論上の瑕疵」があるのか。
それは、1次関数( \(\displaystyle \large y=ax+b \) )に立脚している点にあります。

1次関数とは、単利計算構造のこと。
それは、企業活動を理解するにあたって、正しいのかどうか。

企業実務をよくよく観察すると、次の【資料6】の事実を観察することができます。
【資料6】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限回数で繰り返すその様は、無限で連鎖する複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限回数の複利計算を行なっていくことと同じです。

すなわち、企業のコスト構造やミクロ・マクロの経済構造は、無限回数で連鎖する複利計算機構を内蔵していることがわかります。

それを単利計算構造のCVP分析で解き明かそうとするのが、そもそもの誤り。

これが「理論上の瑕疵」です。


しかも、CVP分析の「救いようがないところ」は、この理論が考案されたのが1903年(明治36年)であり、理論として確立されたのが1920年(大正9年)だということです。

1903年(明治36年)というと、ライト兄弟が動力飛行に成功した年。
その後の飛行技術の進歩は、説明するまでもないでしょう。

一方、管理会計で絶対的通説として君臨するCVP分析(損益分岐点分析)は、1903年(明治36年)から現在(2015年)に至るまで、まったくの進歩なし。

書店で、管理会計や経営分析の書籍を見ると、そのすべてにCVP分析(損益分岐点分析)が掲載され、これに基づいて固定費・損益分岐点・限界利益・貢献利益などが説明されているので、笑っちゃうのであります。

他人の物真似ばかりする専門家たちを、「センセ、センセ」と崇める側にも問題があるわけですが。


21世紀になってもいまだに君臨し続ける絶対的通説だけあって、誰もその「理論上の瑕疵」に気づかず、上場企業のすべてでCVP分析(損益分岐点分析)が用いられています。

なぜなら、この分析道具を用いなければ、決算短信の表紙にある「業績予想」ができないからです。

三菱重工業だけでなく、トヨタ自動車・パナソニック・セブン&アイHDなどの上場企業でも、そのすべてで、単利計算構造のCVP分析(損益分岐点分析)が用いられていることを明言します。

なぜなら、企業のコスト構造を複利計算構造で解き明かした【資料5】の論文は、日本だけでなく、欧米の学者や専門家の誰一人として語ったことがない「高田直芳オリジナル」だからです。

上場企業3千社で数百万人が束になって取り組もうとも、彼ら(彼女ら)が用いているのは、単利計算構造のCVP分析(損益分岐点分析)に基づく管理会計やコスト管理です。


当然のことながら、日本だけでなく海外の企業で利用されている会計システムでも、CVP分析(損益分岐点分析)が搭載されています。

その基本構造は、勘定科目に基づいて、固定費と変動費とを分類するものです。
ところが、これが、さらなる悲劇を生みます。

上記【資料5】の受賞論文18頁では、マツモトキヨシの有価証券報告書データを用い、勘定科目によって固定費を算出した例を掲載しています。

しかし、勘定科目によって固定費を算出したところで、それを1次関数(単利計算構造)で描く限り、固定費を過小評価する、という「理論上の瑕疵」を治癒することはできません。


例えば、削減すべき固定費の金額について、勘定科目を解析した結果、100億円であったとしましょう。

ところが、上記【資料5】の受賞論文で説明している「複利計算構造のタカダ式操業度分析」によると、実際の固定費は、3倍(300億円)にも、4倍(400億円)にもなります。

単利計算構造のCVP分析に基づいて、固定費を過小評価したまま、固締まり(固定費削減)に取り組むと、どうなるか。

上記【資料4】右辺第2項にある固定費を、100億円だけ削減したつもりが、実際には200億円や400億円も削減させてしまうことになるのです。

これにより、【資料4】の付加価値は、企業経営者が想定する以上に毀損します。

以上の愚策を、管理会計や経営分析は、前世紀の初頭から続けてきたのでした。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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