会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

アクセスカウンタ


制作著作 高田 直芳 公認会計士 税理士
会計物理学&会計雑学講座
Accountphysics & Accounting Trivia
© TAKADA Naoyoshi & CPA FACTORY Co.,Ltd.
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
上記研究大会のパワーポイント資料は、こちら。
関東信越税理士界『論陣』掲載論文(PDF 3枚)
『有償支給取引と循環取引に内在する
 税務リスクについて』
執筆者 高田 直芳

zoom RSS 公認会計士高田直芳:実務で役立たない固定費の分類

<<   作成日時 : 2015/09/20 01:00   >>

トラックバック 0 / コメント 0


毎日新聞の記事に、次のような笑い話がありました。
【資料1】毎日新聞2014年9月27日

無人島に流れ着いた物理学者と化学者と経済学者が缶詰を見つけたが、缶切りがない。

物理学者は「石をぶつけよう」、化学者は「たき火で破裂させよ う」と提案、経済学者に意見を聞く。

すると彼、「ここに缶切りがあるとしよう……」。

市場経済を数学的に理論化する経済学の現実離れをからかったジョーク である。


現実離れの話を好むという点では、会計学も、経済学に引けをとりません。

関連記事『直接原価計算・活動基準原価計算・原価企画は、なぜ、破綻するのか』では、固定費について、次の分類があることを紹介しました。
【資料2】

  1. 個別固定費、共通固定費

  2. 管理可能固定費、管理不能固定費

  3. 既決固定費、未決固定費

  4. キャパシティ・コスト、コミテッド・コスト


上記【資料2】以外にもたくさんありますが、いずれも企業実務では、まったく役に立ちません。

例えば、管理可能固定費と管理不能固定費という分類。

新入社員にとって、管理可能なコストといえば、文房具代くらいかも。
フロアの水道光熱費や、パソコンの設備機器などは、新入社員にとって管理不能です。
しかも、彼にとって管理不能なコストが「いくらになるのか」といったことさえ、把握できません。

部課長レベルになれば、管理可能なコストは増えるでしょう。
しかし、部課長が入居するビルの減価償却費や固定資産税は、部課長にとっては管理不能であり、それが「いくらになるのか」さえ把握できません。


社長レベルになれば、すべてのコストが、管理可能になります。
しかし、社長が、現場のコストまで管理するのは非現実的。

すなわち、社長から新入社員に至るまで、管理可能か管理不能か、といったことを分類する意義はナンセンス。

そうなると、あるコストが管理可能か管理不能かというのは、社長の目線で、部課長や新入社員が把握すべきコストを「階層付け」することになります。

そのように「ちまちまとした資料」を作成することに、どれだけの意義があるのでしょうか。


固定費を語るにあたっては、管理可能か管理不能かよりも、もっと本質的なところに大きな問題があります。

それは、上場企業の有価証券報告書を用いて固定費を具体的に求めようとすると、次の関連記事で紹介しているように、「固定費がマイナスに転落する」という異常現象が続出する点です。
【資料3:関連記事】

次の【資料4】に示す新日本法規財団 奨励賞 受賞論文では、日産自動車やNTTのデータを用いて、固定費がマイナスになる原因とその解決策を論述しています。
【資料4】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

固定費は、なぜ、マイナスに転落するのか──。
そうした本質的な問題を解決せずに、【資料4】にある「固定費の分類」を論ずることは、まさに缶詰の封を開けることなく、中味を吟味するようなものです。

管理可能固定費や、キャパシティ・コストなどを得意気に語る人を見かけたら、次の質問をするといいでしょう。
──あなたは、固定費がマイナスに転落する矛盾を解決したのか、と。


上記【資料4】の「固定費の分類」を後生大事にする人は、次のような反論をするかもしれません。

「勘定科目ごとであれば、【資料4】の固定費を分類することは可能であり、しかも固定費がマイナスに転落することはない」と。


勘定科目ごとに固定費と変動費とに分類する方法を、「勘定科目法による固変分解」または「費目別精査法による固変分解」といいます。
以下では、勘定科目法と称します。

この勘定科目法を用いて、総コスト(総費用)を固定費と変動費とに分解した場合、それはどういう計算構造を持っているか、理解していますか。

答えは、単利計算構造です。
なぜなら、勘定科目法は、  の1次関数で、総コスト(総費用)を表わそうとするからです。
1次関数は、単利計算構造に他なりません。

ところが、現実の企業活動では、次の事実を観察することができます。
【資料5】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限回数で繰り返すその様は、無限連鎖の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限連鎖の複利計算を行なっていくことと同じです。

すなわち、企業のコスト構造やミクロ・マクロの経済構造は、無限回数で連鎖する複利計算機構を内蔵していることがわかります。

それにもかかわらず、勘定科目法や費目別精査法といった単利計算構造で、総コスト(総費用)を解き明かそうとするのは、ナンセンスなのです。


もう一度、問います。
    あなたがたは、固定費がマイナスになる異常現象を確かめたことがあるのか。

現代の会計学は、「ここに缶切りがあるとしよう……」と同じ発想で、「ここに固定費があるとしよう……」になってしまっている。

「机上の空論」を振り回すのではなく、企業実務で役立つものを語って欲しいものだ。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
会計物理学&会計雑学講座
Accountphysics & Accounting Trivia

© TAKADA Naoyoshi & CPA FACTORY Co.,Ltd.

テーマ

注目テーマ 一覧



月別リンク

会計物理学&会計雑学講座
Accountphysics & Accounting Trivia

© TAKADA Naoyoshi & CPA FACTORY Co.,Ltd.

日経eラーニング


独自システム開発


高田直芳 公表論文

『会計学と原価計算の革新を目指して』
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
『有償支給取引と循環取引に内在する税務リスクについて』

高田直芳 拙著一覧


公認会計士高田直芳:実務で役立たない固定費の分類 会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる