会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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会計物理学&会計雑学講座
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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
上記研究大会のパワーポイント資料は、こちら。
関東信越税理士界『論陣』掲載論文(PDF 3枚)
『有償支給取引と循環取引に内在する
 税務リスクについて』
執筆者 高田 直芳

zoom RSS 公認会計士高田直芳:CVP分析の固定費はなぜマイナスになるのか

<<   作成日時 : 2015/06/29 01:00   >>

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CVP分析(損益分岐点分析)の
固定費は、なぜ、マイナスになるのか



先日、東京へ向かう東北新幹線の車中で、日本経済新聞社のeラーニングの担当者からメールが届きました。

受講者からの質問でした。
そのeラーニングの中で私が紹介している最小自乗法(最小2乗法)に基づき、具体的な企業について固変分解を行なったところ、「固定費がマイナスになってしまいました。どうしてですか?」というのが質問の内容でした。

「固定費がマイナスになる」というのは、「変動費率が1よりも大きくなる」と同義です。
私が、はるか以前から悩んでいた問題を、この受講生も気がついてくれたのだなと。

日本経済新聞社のeラーニングは、【資料1】の通りです。
【資料1】

上記のeラーニングは、管理会計を初めて学ぼうという人のための、初級編から中級編までを扱ったものです。

伝統的な管理会計論が到達した通説を、平易に解説することを目的として編集しました。


日経eラーニング「よくわかる管理会計入門」では、伝統的な通説の例に倣い、管理会計の基礎理論となるCVP分析も紹介しています。
【資料2】の図表に基づくものです。
【資料2】CVP図表(損益分岐点図表・線形回帰図表)
画像

上記【資料2】を利用して展開する理論を、CVP分析といいます。
別名を、損益分岐点分析・限界利益分析・線形回帰分析ともいいます。

上記【資料2】の図表で問題となるのは、縦軸の点Aから、右上がりの総費用直線(線分AC)を、どうやって描くか、にあります。
これを描くにあたっては、線型回帰分析を利用した、次の方法があります。
【資料3】
  1. 最小自乗法(最小2乗法)
  2. 費目別精査法(さらに次の2種類があります)
    1. 科目比率法
    2. 科目按分法(科目案分法)
  3. 勘定科目法

上場企業の有価証券報告書では勘定科目が開示されないので、【資料3】1. の最小2乗法を使おうという発想が、20世紀初頭のアメリカの会計学界で生まれました。
【資料4:関連記事】

最小自乗法そのものは、ドイツの数学者ガウス(1777〜1855)が、18歳のときに、惑星の軌道を計算するために考案したとされています。
【資料5:関連記事】

線形回帰分析を利用した最小自乗法の計算方法については、次の拙著124ページを参照してください。
2014年10月に、第2版を刊行しています。

最小自乗法は、上記【資料2】にある総費用直線(線分AC)を、1次関数( \(\displaystyle \large y=ax + b \) )で表わす点に特徴があります。


とここで、少し時間があったので、東京駅の改札を抜け、「OAZO丸善書店」へ行くことにしました。
1階はビジネス書が中心です。

「会計」と表示された書棚へ行くと、タイトルに管理会計・原価計算・経営分析の語を用いた書籍が、あるわあるわ。
パラパラとめくると、そのすべてに上記【資料2】と同じものが掲載されていました。

書棚には、アメリカの会計学者の翻訳本もあって、そこにも上記【資料2】と同じものが掲載されていました。
日本でもアメリカでも、20世紀初頭から21世紀の現在に至るまで、上記【資料2】の図表が「何とかの一つ覚え」のごとく、コピー&ペーストされてきた事実を確認することができます。

20冊ほどを見たところ、固定費がマイナスになる現象に言及している書籍は1冊もありませんでした。
当然、固定費がマイナスになる原因も記述されていません。

ましてや、それをどう克服するか、といった問題意識を持った書籍は、1冊もありませんでした。


日本経済新聞社のeラーニング「よくわかる管理会計入門」は、初学者向けです。

管理会計を学び始めて3か月くらいの人が、固定費がマイナスになる現象に気がついているのです。
私は、公認会計士として生計を立て始めた頃すでに、この問題を認識していました。

ところが、丸善書店の書棚に鎮座している20冊ほどの専門書はいずれも、固定費がマイナスになる現象には言及していないのです。

これが「権威」や「第一人者」と呼ばれて、「象牙の塔」の中でふんぞり返っている人たちの正体です。


丸善書店で長居をしているわけにはいかないので、固定費がマイナスになる理由を簡単に説明しておきます。

次の【資料6】の方法で、企業のコスト構造を描く方法を、「タカダ式操業度分析」といいます。
【資料6】タカダ式操業度分析
画像

以前は、SCP分析( Sales Cost and Profit Analysis )と称していましたが、現在では、タカダ式操業度分析の名称で統一しています。

上記【資料6】では、企業のコスト構造は縦軸の点Aから始まり、点A→点B→点C→点D→点Eへと、複利曲線上で展開されるもの、としています。


上記【資料6】を描くキッカケは、私の実務経験に基づきます。

現実の企業活動や経済現象では、次の【資料7】に示す事実を観察することができます。
【資料7】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限回数で繰り返すその様は、無限で連鎖する複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限回数の複利計算を行なっていくことと同じです。

すなわち、企業のコスト構造やミクロ・マクロの経済構造は、無限回数で連鎖する複利計算機構を内蔵していることがわかります。

その発想に基づいて描いたのが上記【資料6】の図表であり、それを論文にまとめて受賞の栄誉を得たものが次の【資料8】です。
【資料8】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

上記【資料6】において、企業のコスト構造が点D(最大操業度点と表示)あたりにある場合で、そこから上記【資料2】の教えの通りに1次関数( \(\displaystyle \large y=ax + b \) )を描くと、その直線は原点Oよりも下に着地します。

これが、固定費がマイナスになる(変動費率が「1」よりも大きくなる)理由です。

上記【資料6】にある点D(最大操業度点)は、経済学でいう利潤最大化条件(限界収入MR=限界費用MC)を満たすところであり、線分GDを「タカダライン」と呼びます。
企業業績が「史上最高益を更新!」と、はしゃぐ状態のとき、上記【資料2】のCVP分析の固定費はマイナスに転落している可能性があります。

以上の現象については、次の関連記事でも説明しました。
【資料9:関連記事】

上記の【資料9:関連記事】では、企業業績が向上するにつれて固定費が「自動的に減っていく」事象に気づこうともせず、企業の原価低減努力を誉めそやす愚かさを説明しました。

上記【資料2】のCVP分析(損益分岐点分析・限界利益分析)はつくづく、愚論であることがわかります。

なお、線形回帰分析そのものが愚論だと述べているわけではありません。
企業のコスト構造を解明するにあたり、線形回帰分析を当てはめる方法論が愚論だ、と述べているのです。


タカダ式操業度分析の場合、企業のコスト構造が、上記【資料6】の──
 ・点Bから点Cの区間に分布しようとも、
 ・点Cから点Dの区間に分布しようとも、
 ・点Dから点Eの区間に分布しようとも、
縦軸の点A(基準固定費と表示)に着地します。

マイナスに転落するような醜態を曝(さら)すことはありません。


丸善書店の書棚に並んでいる20冊ほどの執筆者は、私よりも偏差値が高い方々です。
私は英会話がまったくできないので、アメリカの会計学者やMBAホルダーには歯が立ちません。

しかし、20冊の書籍が束になってかかってきても、上記【資料6】や【資料8】のタカダ式操業度分析は負けない自信があります。

失礼ながら、損益分岐点分析、固変分解、限界利益、変動利益といった概念を、なんの反省もなく使用している書籍は、会計の根本的なところで大きな勘違いをしているといっていい。
【資料10:関連記事】

20冊ほどの書籍を見ていて他に気づいたのは、EBITDAやら、EVAやら、NOPAT(税引き後の営業利益)やら。
特に、EVA(経済的付加価値)を経営指標として採用する上場企業が増えてきているようです。

会計の世界って、ホント、欧米に媚びへつらう「提灯持ち」ばかりだなと。
固定費がマイナスに転落する問題を解決せずに、あなたがたは何をやっているんだか。

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〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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