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zoom RSS 公認会計士高田直芳:ROE(自己資本利益率)はなぜ急激に改善するのか【後編】

<<   作成日時 : 2015/05/07 01:00   >>

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ROE(自己資本利益率)は、なぜ
急激に改善するのか【後編】



今回は、従前ブログ「ROE(自己資本利益率)は、なぜ、急激に改善するのか【前編】」の続き、すなわち【後編】です。

【前編】では、売上高が3%程度増加すると、レバレッジ(梃子=てこ)効果が働いて、当期純利益は30%くらいは軽々と増加する、と述べました。

このレバレッジ効果から、いくつか面白い問題点を指摘することができます。

1つめは、上場企業では血眼になって「固定費を削減せよ!」と現場を叱咤し、メディアも盛んに「固定費削減」を囃し立てます。

試しに、日本経済新聞の過去1年間の記事について、「固定費削減」「固定費を削減」「固定費の削減」で検索すると、69件もヒットします。
【関連記事】

固定費削減が本当に進んでいるのであれば、【前編】で説明した弾力係数は小さくなっている(レバレッジ効果は薄まっている)はずであり、ROE(自己資本利益率)が急激に増加することはあり得ないのです。

それにもかかわらず、2015年5月6日付の日本経済新聞の記事では「2年前に5%台だった日本企業のROEは今期10%に乗せそうで、急激に改善している」と述べられています。
これは明らかな矛盾です。

この矛盾の原因は、どこにあるのでしょうか。

実は、ニッポンの企業では、積極的な固定費削減などほとんど行なわれてこなかった、という事実を指摘することができます。


従前ブログ「決算短信の「業績予想」に騙されてはいけない 」に掲げた〔図表6 タカダ式操業度分析(静態図表)〕では、売上高が増加するにつれて、「固定費が自動的に減少する現象」を説明しました。

上場企業の多くが「固定費削減に積極的に取り組んできたぞ」と主張するのは、ただの錯覚であり、実際には固定費削減などほとんど行なわれていなかったのです。

そもそも、そんなに簡単に削減できるものなど、固定費とは呼びません。

固定費に積極的に取り組んでこなかったからこそ、いま、売上高がほんの少しでも増加すると、それにレバレッジ効果が働いて、日本経済新聞が述べているように、ROEは「急激に改善」していくのです。

皮肉としかいいようのない現象です。


2つめは、ROE(自己資本利益率)の構成要素である当期純利益には、レバレッジ効果が働くので、ROEも大きな変動に襲われます。

それにもかかわらず、ROEを業績指標として使わざるを得ないのは、当期純利益よりも優れた「利益指標が見つからない」という事情があります。

いえ、当期純利益よりも優れた利益指標としては「限界利益」があります。
貢献利益や変動利益とも呼ばれ、次の式で表わされます。
【資料1】  (限界利益)=(当期純利益)+(固定費)

単一製品を大量生産している企業など、この世に存在しません。
複数製品を生産し販売しているのが普通です。

その場合に、どの製品を優先的に扱えばいいのか、その判断基準となるのが、上記【資料1】の限界利益(貢献利益・変動利益)です。

「限界利益と貢献利益は異なる概念だ」と主張する向きもあるでしょうが、重箱の隅をつついた、愚かな議論です。
それでも「異なる概念だ」と主張する人たちに、次の関連記事を掲げておきます。
【関連記事】

限界利益(貢献利益)の効果のほどは、次の拙著277ページ以降で詳述しています。
2014年10月に大幅改訂を行ない、第2版としています。

この限界利益には、大きな欠陥があります。
それは、上記【資料1】の右辺第2項にある「固定費」です。

通常、固定費を求めるにあたっては、CVP分析(損益分岐点分析)を用います。

ところが、次の受賞論文でも証明しているように、CVP分析によって求めた固定費は、マイナスになることがあるのです。
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

たとえ固定費がマイナスにならなくとも、もう一つ、困った問題があります。

それは、稼働率などお構いなしに、設備投資をばんばん行なっただけで、固定費はどんどん増加し、限界利益(貢献利益)はがんがん増加するのです。
その恐ろしさについては、次の【関連記事】で説明しました。
【関連記事】

限界利益の構成要素をなす固定費がこのような体たらくでは、上記【資料1】の限界利益を、利益指標として使えるわけがありません。

その結果、上記【資料1】の右辺第1項の「当期純利益」を用いて、ROE(自己資本利益率)が語られる、というのが現状です。


当期純利益では「やはり心許ない」と憂える、良心的な人たちもいます。
そこで彼ら(彼女ら)は、EBITDAという利益指標を用います。

EBITDAは、上記【資料1】の右辺第2項にある固定費の代わりに、減価償却費・引当金・税金費用などを当てはめるものです。
国際会計基準(IFRS基準)では、“ Non-IFRS Measures ”または“ Non-GAAP Measures ”と呼ばれている利益指標です。

EBITDAのメリットは、マイナスに転落する可能性がほとんどない、という点にあります。
ただし、このEBITDAにも大いなる欠陥があることは、上記の奨励賞受賞論文で証明してあるとおりです。

なお、ノーベル生理学医学賞を受賞した山中伸弥教授の言を拝借するならば、EBITDAは、次の関連記事で紹介している「阿倍野の犬実験」に該当します。
【関連記事】

当期純利益が駄目、EBITDAも駄目、ではどうすればいいか。
答えは、もう一つの学術論文、すなわち次の論文の【6】に記述しています。
日本公認会計士協会 第35回 研究大会 発表論文
管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)

知恵を絞れば、アイデアはいくらでもあるということです。
知恵をしぼらぬ者は、「阿倍野の犬実験」を繰り返すばかりなり。

【その他の関連記事】
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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