会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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制作著作 高田 直芳 公認会計士 税理士
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© 2015 TAKADA Naoyoshi & CPA FACTORY Co.,Ltd.
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
上記研究大会のパワーポイント資料は、こちら。
関東信越税理士界『論陣』掲載論文(PDF 3枚)
『有償支給取引と循環取引に内在する
 税務リスクについて』
執筆者 高田 直芳

zoom RSS 公認会計士高田直芳:一般公式や実務解を示さずに企業価値を得意気に語る人々がいる

<<   作成日時 : 2015/04/25 01:00   >>

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一般公式や実務解を示さずに
「企業価値」を得意気に語る人々がいる

高田直芳の実践会計講座
「経営分析」入門 補足説明



今回の話は、次の関連記事を、現時点の法令や制度に合わせて加筆修正したものです。
【資料1:関連記事】

さて、これほどの「机上の空論」はないだろう、というのが、「企業価値」という概念です。
日本経済新聞で過去1年間、「企業価値」という語がどれだけ用いられたかを検索したところ、411件もありました。

企業価値はこれほど頻繁に用いられる用語でありながら、会計学や経済学の書籍や論文を見渡しても「企業価値を求める一般公式」を提示したものは、1冊も1本も存在しないのです。
実務をこれほど愚弄した話はなく、企業価値はまさに「机上の空論」です。

企業価値を求める方法として一般的に紹介される、収益還元法、純資産法、ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF)などは、「企業価値の個別解」を求めるものであって、「企業価値の一般解」を求めるものではないので念のため。

以下では、机上で騒いでいる人たちに一瞥をくれながら、オリジナルの理論(最適資本構成タカダ理論)から導き出した「一般公式」を用いて、その「実務解」を提示してみることにします。


「最適資本構成タカダ理論」は、「タカダ式操業度分析」同様、多くの人から鼻で笑われてきた理論です。
ただし、「タカダ式操業度分析」については、次の第三者機関によって正当な評価を受けました。
【資料2】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

「賞」をとると、今度は手のひらを返したように、賞賛してくれる人が増えました。
人の評価というのは、こういうものなのでしょう。

「最適資本構成タカダ理論」が鼻で笑われ続けるかどうかは、今後の私の努力次第です。


以下では、連結貸借対照表や連結キャッシュフロー計算書に計上されている現金預金を、キャッシュと呼ぶことにします。

このキャッシュは、その先、何に使われるのかを把握するのが難しい。
金庫や銀行口座でいったん混ざってしまえば、キャッシュの運用先ごとに色分けができないからです。

それに対して、キャッシュの調達源泉は、ある程度、把握することができます。
負債などの「他人資本」か、資本金や当期純利益などの「自己資本」か、によって色分けができるのです。

その基準となるのが、法人税。
他人資本には節税効果が働き、自己資本には節税効果が働かない、という違いによって色分けすることができます。


節税効果にに着目して、他人資本を増加させると企業価値は高まる、という命題を提起したのが、経済学やファイナンス論で有名な「MM理論」です。
「MM」は、モジリアーニとミラーという二人の経済学者の頭文字をとったものであり、両氏はのちにノーベル経済学賞を受賞しています。

MM理論は、「他人資本を増加させると企業価値は高まる」という命題にとどまりません。
他人資本(負債)を増加させると、「倒産リスク」を増加させる、という命題へと続きます。
したがって、他人資本の増加が、ある一定の限界点を超えると「企業価値」は減少に転じることになります。

その限界点で企業価値は最大となり、他人資本と自己資本との「最適資本構成」が実現されるであろう、とするのがMM理論の全体像です。
以上をまとめると【資料3】になります。

【資料3】MM理論の命題
  1. 法人税を想定する場合、他人資本を増加させると節税効果が働くので、企業価値は高まる。

  2. 他人資本を増加させると倒産リスクが次第に増えるので、ある一定の限界点を超えると企業価値は減少に転ずる。

  3. その限界点で企業価値は最大となり、他人資本と自己資本との最適資本構成が実現される。

【資料3】を視覚的に説明するものとして、経済学やファイナンスの世界でしばしば作図されるのが、次の【資料4】です。
【資料4】
画像

【資料4】において、横軸のOKは、使用総資本(=他人資本+自己資本)を表わします。
すなわち、横軸のOKは「使用総資本100%」です。

【資料4】の原点Oでは、他人資本は0%。
つまり、「自己資本100%」ということ。
このときの企業価値(縦軸)は、線分AOで表わされます。

【図表 1】1. によれば、他人資本を徐々に増やしていくと、節税効果が生まれます。
そこで【資料4】の横軸上において、原点O → 点G → 点H → 点J へと、他人資本を増やしていくと、節税効果が働くので、点A → 点B → 点Cへと、企業価値(縦軸)が高まっていきます。


ところが、他人資本を増やしすぎると、「負債過多」に陥ります。
「借金を返済するために、新たに借金を作る自転車操業」の状態です。
これにより、【資料4】の線分CEまたは線分DFで表わされる倒産リスクが増大することになります。

そうなると、その手前にある点Eあたりが「ちょうどいい案配」ということになります。
この点Eで、縦軸にある企業価値は最大になるぞ、というのが、【資料3】3. の前半部分です。


【資料4】の横軸に注目します。
企業価値を最大にするのが点Eなのだから、横軸上の点Jが、他人資本(線分OJ)と自己資本(線分JK)との最適な組み合わせを決定する座標になります。

したがって、この点Jのところを、最適資本構成といいます。
これが【資料3】3. の後半部分です。


経済学やファイナンス関連の書籍であれば、以上で説明した「企業価値」や「最適資本構成」の論点が必ず掲載されています。
MBAホルダーたちを輩出するビジネススクールでも同様の説明が行なわれています。

ところが、企業価値や最適資本構成の論点に関する最大の欠点は、これらを求めるための「一般公式が存在しない」という点にあります。
次の書籍65ページで、明確に言及されています。

ウィキペディアでも、次の通り説明されています。
【資料5】ウィキペディア「MM理論」

MM理論が公表されて以来、最適資本構成に関する一般公式や実務解が未だに提示されておらず、研究論文などでは「実務での検証が望まれる」といった結びが多い。


企業価値を論ずるのであれば、それを求める「一般公式」と、その「実務解」とを明示するのが、オトナの行動というものでしょう。
ところが、上掲の書籍にもあるとおり、「一般公式はない」とするのが、会計学や経済学における絶対的通説なのですから、当然のことながら「実務解もない」ことになります。

企業価値を算定する方法としては収益還元法などがありますが、これらは【資料4】の点Eを求める一般公式ではありません。
ましてや、【資料4】の点J(最適資本構成)を求める一般公式でもありません。

それにもかかわらず、「企業価値」に関して、1年間で411件もの記事が掲載される現状は──。
これを「羊頭狗肉のファイナンス論」といいます。

大学やビジネススクールで、企業価値や最適資本構成の講義を受けて、その最後に「実は、これらを求めるための一般公式はありません」という説明を行なう講師がいたら、「ふざけるな。授業料を返せ!」と抗議の声を上げるべきでしょう。


日本の会計学や経済学などにおける主要な理論は、欧米からの「翻訳輸入」で成り立っており、欧米で確立された理論に基礎を置いたものでなれば、国内では見向きもされない傾向があります。
【資料6:関連記事】

それに倣えば、企業価値や最適資本構成の問題は、欧米の専門家が解決しない限り、日本国内ではいつまで経っても「一般公式はない」という説明が繰り返されることになります。
「企業価値」を論ずる人たちは、「観念論が大好きな評論家」と断言していいでしょう。

そうした風潮に反旗を翻し、筆者オリジナルの方法で一般公式と実務解を導く方法が、「最適資本構成タカダ理論」です。
「企業価値や最適資本構成に一般公式はない」とするのが、絶対的通説なのですから、企業価値や最適資本構成の実務解を示す「最適資本構成タカダ理論」は、日本だけでなく欧米にも存在しないことを申し添えておきます。


その最適資本構成タカダ理論では、次の【資料7】に示す2種類の解法によって一般公式を導きます。
【資料7】一般公式を導くための2種類の解法
  1. 〔解法その1〕経済学の「代替財」を用いた解法
       第53回コラム(中小企業編)
       第57回コラム(JR東日本編)
       第72回コラム(ユニクロ編)
       第103回コラム(JX・出光編)

  2. 〔解法その2〕経済学の「収穫逓減」を用いた解法
       第6回コラム(シャープ・ソニー・東芝編)
       第37回コラム(ソフトバンク・NTTドコモ編)
       第91回コラム(ANA全日空・パーク24編)
       第121回コラム(小田急・阪急阪神HD編)

【資料7】〔解法その1〕は、経済学の「代替財」の概念を用いて解きます。
同〔解法その2〕は、経済学の「収穫逓減」の概念を用いて解きます。

「代替財」と「収穫逓減」とはまったく異なるルートですが、行き着く頂上(一般公式)はまったく同じであることを、【資料7】に掲げた各コラムで紹介しています。
解法の詳細については、次の書籍を参照してください。

以下では、上場企業14社の決算データを利用し、最適資本構成タカダ理論の「実務解」を紹介します。
用語に関する定義は【資料8】の通りです。

【資料8】用語の定義
  1. 他人資本比率
       ……使用総資本に占める他人資本の実際比率

  2. 最適デット(debt)比率
       ……使用総資本に占める他人資本の最適比率

以下の図表にある黒色の実線は【資料8】1. の他人資本比率を表わし、灰色の実線は同2.の最適デット(debt)比率を表わします。
いずれも四半期ごとの移動平均で描きました。


鉄道会社は、自己資本だけでなく他人資本をも積極活用して「規模の経済」を追求するビジネスモデルです。
【資料9】では、小田急電鉄と阪急阪神HDの「実務解」を示しました。
【資料9】
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【資料9】に掲げた小田急電鉄と阪急阪神HDはともに、他人資本比率(黒色の実線)と、最適デット比率(灰色の実線)とが絡み合っています。
両社とも【資料4】の点J近辺にあるといえ、企業価値の最大化を数期間にわたって維持した状態にあることがわかります。


製薬会社は鉄道会社と異なり、新薬開発というリスクを取りに行くビジネスモデルであるため、他人資本よりも自己資本に多く依存します。
リスクの高い株式投資の原資を、借金で調達してはならないのと同じ理屈です。

【資料10】左図の田辺三菱製薬の場合、他人資本比率(黒色の実線)と、最適デット比率(灰色の実線)とがともに低く推移しています。
これがリスクを取りに行く製薬会社の特徴です。

【資料9】の小田急電鉄と阪急阪神HDでは、2本の線が上方で絡み合っているのに対し、【資料10】左図の田辺三菱製薬では、2本の線は下方で絡み合っています。
絡み合う2本の線の位置は異なりますが、小田急電鉄・阪急阪神HD・田辺三菱製薬の3社はいずれも、企業価値を最大化しているといえます。
【資料10】
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【資料10】右図の武田薬品工業において、2011年後半以降の2本の線に乖離が認められるのは、ナイコメッド社を1兆400億円で買収した影響です。
最適デット比率(灰色の実線)の急上昇に、他人資本比率(黒色の実線)が追いついていないのは、買収資金の一部(4000億円)を自己資本でまかなったため。

武田薬品工業では、大型のM&A戦略により一時的に【資料4】の点Jから乖離したものの、2013年以降の最適デット比率は下降しており、【資料4】の点Jへ再び戻っていると解釈できます。
すなわち、武田薬品工業は再び、企業価値を最大化する状態に復帰しているといえます。


通信会社は無数の利用者を抱え、鉄道会社と同じく「規模の経済」を追求するビジネスモデルです。
製薬会社のように、リスクを取りに行くビジネスモデルではありません。

次の【資料11】左図に示すソフトバンクは、スプリント・ネクステル社などの買収資金の多くを有利子負債に依存しているため、他人資本比率(黒色の実線)が、最適デット比率(灰色の実線)に近接します。
ソフトバンクの2013年12月期の純利益は対前年同期比58%増であり、同社の企業価値は、最大に近づきつつあったといえます。

【資料11】右図のKDDIの他人資本比率(黒色の実線)が50%を割っている(=自己資本比率が50%を超えている)のは、「規模の経済」の追求に消極的なためと解釈されてもやむを得ません。
その結果、KDDIは、企業価値を最大化していないと映ります。
【資料11】
画像

「自己資本比率は50%以上が望ましい」と主張する人々がいます。
その主張によれば、【資料11】左図のソフトバンクは望ましくなく、右図のKDDIは望ましいことになります。

これは奇妙です。
自己資本比率が50%以上というのは、【資料4】の点H(中点に位置する)よりも左側にあることをいいます。

しかし、点Hの左側が望ましい(最適資本構成である)とする一般公式は「存在しない」とするのが、会計学や経済学における絶対的通説であったはず。
「自己資本比率は50%以上が望ましい」と主張するのは、「羊頭狗肉のファイナンス論」に、恥の上塗りをするようなものです。

したがって、次に示す2つの命題は、いずれも「偽」であることがわかります。
【資料12】

  • 自己資本比率は50%以上が、一般的に望ましい。

  • 他人資本比率は50%以下が、一般的に望ましい。


次の【資料13】を見ると、日産自動車と東レの企業価値はほぼ同じ、という評価をしてしまいそうです。
ただし、【資料13】右図の東レの最適デット比率(灰色の実線)と、他人資本比率(黒色の実線)との幅は、2012年後半以降、次第に狭まり、同社の企業価値は高まっているといえます。
東レの報告セグメントを見ると、炭素繊維・複合材料事業などの収益力が際立っていることがわかります。
【資料13】
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【資料14:関連記事】

次に示す【資料15】のコマツと山崎製パンでは、最適デット比率(灰色の実線)と、他人資本比率(黒色の実線)との広狭に差があります。
コマツのほうは自己資本が充実していると評価されますが、企業価値は山崎製パンのほうが高いと評価されます。
【資料15】
画像

上場企業では、自己資本の充実(自己資本比率の上昇)を経営目標として掲げているところが多い。
他人資本比率(黒色の実線)が、最適デット比率(灰色の実線)を下回る状態にありながら、自己資本比率を高める(黒色の実線を下方へシフトさせる)のは、【資料4】の点Jから点Hへ、または点Hから点Gへシフトさせることです。
これは、点Eから点Bへと「企業価値を低める」ことになるので注意したいところ。

自己資本の充実(自己資本比率の上昇)は、企業価値を高めるのではなく、倒産リスクを減らすためであることを指摘しておきます。
【資料4】をよく見てください。
横軸上の点J → 点H → 点Gは、自己資本を充実させる過程であるにもかかわらず、企業価値は減少するのです。


次の【資料16】のイオンとセブン&アイHDは、鉄道会社や通信会社と同じく「規模の経済」を追求するビジネスモデルです。
リスクを取りに行くビジネスモデルでないことを、再確認しておきます。

イオンとセブン&アイHDともに、他人資本比率(黒色の実線)が、最適デット比率(灰色の実線)に到達しておらず、外部からの資金調達によって積極的な店舗展開を行なうことにより、企業価値をさらに高める余地があります。

最適デット比率(灰色の実線)は、両社とも同じ水準にありながら、他人資本比率(黒色の実線)は、イオンのほうが高めに推移しています。
イオンはセブン&アイHDよりも企業価値が高い、と解釈できます。
【資料16】
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ただし、この場合の「高い」とは、現有の経営資源のもとにおける相対的な評価であり、絶対的な評価ではありません。
イオンは「兵站は伸びきったための高さ」であるといえるし、セブン&アイは「のびしろがあるための低さ」と評価することができます。


次の【資料17】左図に掲げた医療事務・介護事業大手のニチイ学館は、他人資本比率(黒色の実線)が、最適デット比率(灰色の実線)に近接しており、企業価値はかなり高いものと解釈できます。

【資料17】右図のオリエンタルランドの他人資本比率(黒色の実線)はかなり低い。
アトラクションなどの充実により、企業価値をさらに高める余地があります。
裏を返せば、あれだけ大混雑していながら、企業価値の最大化はまだ道半ばのようです。
【資料17】
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以上、上場企業14社のデータを用いて、企業価値と最適資本構成の実務解を紹介してきました。
これらの話で、もの足りないのは、他人資本の調達(他人資本比率の上昇)の面から、企業価値を高める余地があるかどうかを評価しているにすぎない点です。

過剰投資によって稼動率不足に陥るリスクは、別の面から検証すべき事項です。
それを解決するのが、新日本法規財団 奨励賞を受賞した「タカダ式操業度分析」です。

「最適資本構成タカダ理論」と「タカダ式操業度分析」を両輪として用いるのが、私(高田直芳)が創設した会計物理学の世界です。

【その他の関連記事】
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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