会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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zoom RSS 公認会計士高田直芳:加重平均資本コスト率WACCで事業価値や企業価値を語る愚かさ

<<   作成日時 : 2017/09/25 01:00   >>

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加重平均資本コスト率WACCで
事業価値や企業価値を語る愚かさ



次の関連記事では、正味現在価値法(NPV)、内部利益率法(IRR)、ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF)を用いて、企業価値や事業価値を語る愚かさを説明しました。
【資料1:関連記事】

懲りないというべきか、NPVやIRRなどではなく、WACCを用いて事業価値や企業価値を語る人が、今でもときどき現われます。

WACCというのは、加重平均資本コスト率(Weighted Average Cost of Capital)の略称であり、次の拙著532ページ以降で詳細な説明を展開しています。
【資料2】
決定版
ほんとうにわかる管理会計&戦略会計

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2014年10月に、第2版としています。

会計などでメシを食う人には、至極当たり前のWACC。
その計算式を【資料3】に掲げます。
【資料3】


     : 負債
     : 株主資本
      : 法定実効税率
     : 負債コスト率
     : 株主資本コスト率

2017年9月22日付の日本経済新聞「企業価値評価のイロハ(8)最適な負債比率、コスト抑制(なるほど投資講座)」の記事を引用しながら、【資料3】の式を説明してみましょう。
【資料4】日本経済新聞「なるほど投資講座(8)」2017年9月22日

負債には節税効果があります。

借り入れに伴う支払利息は税務上の損金に算入され、法人税の課税対象から除外されます。

無借金の場合に比べ法人税の支払いを節減でき、その分だけ株主と債権者が受け取る金額が増えます。

節税効果は将来にわたるので、資金提供者から見た企業価値が高まります。


上記【資料4】にある「節税効果」や、「法人税の支払いを節減」とあるのは、【資料3】右辺第1項にある の部分を指しています。
が法定実効税率であることを再確認してください。
【資料5】日本経済新聞「なるほど投資講座(8)」2017年9月22日

では負債を増やすほどいいかといえば、そうではありません。

負債が多すぎて株主資本が少ないと、倒産リスクが高まります。

格付け会社は負債の返済能力が低いとして、格付けを下げます。

銀行も債務者区分を下げるため、金利が上昇し負債コストが高まります。

株主資本コストも高まり、結果的にWACCが上昇します。負債は少なすぎても多すぎても良くないのです。


上記【資料5】から明らかなことは、加重平均資本コスト率WACCには、最小となる点が存在するらしい、ということです。
この「最小となる点」のところを、最適資本構成といいます。

では、最適資本構成は、どうやったら求めることができるのか。
【資料6】日本経済新聞「なるほど投資講座(8)」2017年9月22日

実は、最適な資本構成がどのくらいなのか、導くのは簡単ではありません。

キャッシュフローがどの程度安定しているか、どのような事業リスクを抱えているかなど、企業ごとに多角的に分析する必要があります。

あらら〜、です。

「導くのは簡単ではありません」どころか、最適資本構成を求めるための一般公式や実務解は存在しない、というのが、現在の経済学やファイナンス論の通説です。
上記【資料1】の関連記事で、すでに説明済み。


あまたの経済学者や会計学者がいながら、なぜ、一般公式や実務解を見つけることができないのでしょうか。

ヒントは、上記【資料4】や【資料5】の記事に隠されています。
これらの記事を注意深く読むと、負債と株主資本の組合せによって、WACCは上昇したり、下降したりすることがわかります。

これを数学的に解釈すると、次の通りとなります。

例えば、「事業価値曲線」や「企業価値曲線」といった「曲線」があると仮定しましょう。
その曲線上の「接線の傾き」が、WACCなのです。

負債を増やして節税効果が働き、WACCが低下するというのは、曲線上の接線の傾きが小さくなることを意味します。

負債を増やしすぎて、倒産のリスクが高まり、WACCが上昇するというのは、曲線上の接線の傾きが大きくなることを意味します。

つまり、WACCというのは、「事業価値方程式」または「企業価値方程式」とも呼ぶべき方程式を微分して求めた「導関数」なのです。


「WACCの最小点」または「事業価値や企業価値の最大点」というのは、事業価値方程式または企業価値方程式の「極値」です。

極値を求めたいのであれば、WACCを積分して、事業価値や企業価値という「原始関数」を求めればいいことになります。

ところが、【資料3】のWACCの式を積分する方法は、いまだ発見されていません。
【資料6】にあるように、最適な資本構成を求めるのは、お手上げなのです。

それでは身も蓋もないので、次の関連記事で、「ラグランジュの平均値定理」と「ロルの定理」を扱ったことを紹介しておきます。
【資料7】

WACCを語り、その延長で事業価値や企業価値を語っている人を見かけたら、その人は、高校1年で数学に挫折し、その後、微積分の平均値定理などを学ばなかったのでしょう。

悔しかったら、【資料3】の式を \( f(x) \) と置き、次の【資料8】にある手順で、原始関数 \( F(x) \) を求めてみることだ。
【資料8】最適資本構成タカダ理論
\( f(x) = \dfrac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \dfrac{E}{D + E}r_{e} \tag{1} \)
\(\displaystyle F(x) =\int f(x)dx \tag{2} \)
\(\displaystyle F(x) =\int \left( \dfrac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \dfrac{E}{D + E} r_{e} \right) dx \tag{3} \)
\( F(x)= \dfrac{\ln D - \ln (D + E)}{(1-t) \cdot r_{d}} + \dfrac{\ln E - \ln (D + E)}{r_{e}} + C \tag{4} \)

上記【資料8】の手順を、「最適資本構成タカダ理論」といいます。


上記【資料8】(4) の原始関数で、事業価値や企業価値の「極値」を求めるのは、とても簡単。

それに対し、【資料8】(1) の導関数で、極値を求めるのは至難の業。

その結果、【資料6】にある通り、「企業ごとに多角的に分析」せざるを得なくなるのです。

「曲線の傾き」は無限に存在するのだから、そりゃあ、「多角的」にもなるだろうさ。


WACCをねじ伏せるために、ビッグデータだ、人工知能AI だ、と騒いでいるのだとしたら、それは用途を間違えている。

数学嫌いの人々や会計知なき人々の尻ぬぐいをさせられるのでは、人工知能AI もさぞかし、やり切れない思いだろう。


ちなみに、私(高田直芳)は、事業価値そのもの、企業価値そのものを求めるノウハウを、自身のサブノートに記しています。
次の関連記事で紹介した通り。
【資料9】

私は実務家であり、学者ではないので、学問の発展に貢献する気は、まったくありません。

権威に媚びず、徒党を組まず、組織の威を借りず、税金を原資とした俸給や補助金等を一切もらい受けずに活動すること。
それが栃木の野に下ったサムライの意地です。
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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