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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
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日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
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zoom RSS 公認会計士高田直芳:四半期開示不要論と財務分析の敗北感

<<   作成日時 : 2017/10/25 01:00   >>

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四半期開示不要論と
財務分析の敗北感



2017年10月24日付の日本経済新聞「十字路」では、政府の成長戦略「未来投資戦略2017」が、四半期ごとに業績を開示する制度を見直す方向で検討している旨が紹介されていました。

法人税等の中間申告に平仄をあわせ、半年開示(6か月に1度の半期開示)へ戻す、ということなのでしょう。
定時株主総会の開催日の幅を広げるためには、第1四半期は邪魔だ、という考えもあります。

人工知能AI が、決算業務・法務・税務を担うのは、もっとずっと先の話のようです。

ひところ、税理士や公認会計士などの業務は、人工知能AI に取って代わられる、と揶揄されました。
現実はどうやら、逆回転しているようです。

四半期開示制度に対する批判の多くは、その記事でも紹介されているように、「短期で成果を出すよう経営者や投資家に心理的な圧力を掛ける」点にあるようです。

その批判に応じたものなのでしょう。
英国では、2007年に導入された四半期開示義務が、2014年には撤廃されたことが、上掲記事で紹介されていました。

ただし、その前後の経緯を紹介した記事が面白い。
【資料1】日本経済新聞「十字路」2017年10月24日

最近発表された学術論文は、わずか7年で制度が大きく変化した英国を取り上げた。

開示義務の導入と撤廃が企業や市場に与えた影響について、その論文は分析。

上場企業の設備投資や研究開発費を見る限り、義務化で経営が短期志向になるとか、撤廃で長期志向になったとの変化は見いだせないと結論づけた。


すなわち、四半期開示を続けようとも、四半期開示を撤廃しようとも、企業活動はニュートラルだ、ということです。

上記【資料1】で、ニュートラルの分析結果が得られるのは「なぜなのか」という理論背景まで述べられていないのは残念ですが、それはさておき──。


四半期開示制度が抱える問題点は、開示する企業側の「圧迫感」にあるのではなく、四半期報告書を分析する側の「発想の貧困」にある、と個人的には考えています。

私(高田直芳)が創設した会計物理学の世界から批判するならば、現代の経営分析・財務分析・管理会計の世界では「速度」と「加速度」の違いがまったく理解されていない。

ROAやROEやDEレシオなどの経営指標は、これらを四半期ごとに計算しようと、年間の移動平均で計算しようと、「一定の速度」を分析しているに過ぎない、ということです。

速度が一定であれば、加速度はゼロ。
何もないところ(ゼロ)からは、如何なる発想も生まれない。
そうした「発想の貧困」が、企業業績を見誤るのです。

業績評価で重要なのは、「加速度」です。


速度分析と加速度分析とは、どう異なるのか。

次の受賞論文では、その下にある【資料3】の図表を掲載しています。
下掲【資料3】が、加速度分析となる基本図表です。
【資料2】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳
【資料3】タカダ式操業度分析
画像

上記【資料3】において、点Bから点Cへ向かうのは、増益です。
これは「正の加速度」です。

ところで、増益には、もう一つあります。
点Eから点Dへ向かうものです。
これも増益となるものですが、ただし、これは「負の加速度」です。


現代の財務分析や経営分析は、黒字の大きさを、ROAやROEで論じようとする。
これらの経営指標は速度分析であって、加速度分析ではありません。

まれに、増益基調を説いた分析したレポートもあります。
ただし、その増益が、「正の加速度」なのか、「負の加速度」なのかまでは言及していない。

「負の加速度」によっても、増益になることを、彼らはまったく理解していない。
彼らには、速度(速さ)に関する概念しかないのですから、仕方のないことです。


速度分析の典型例として持ち出すのが、次に掲げる損益分岐点分析(CVP分析)です。
【資料4】損益分岐点分析(CVP分析)
画像

上記【資料4】では、点A → 点F → 点Dへと、「一定の速度」で上昇していきます。
上記【資料4】における加速度は「常にゼロ」であり、この図表に加速度の考えはありません。

ましてや、【資料4】では、「負の加速度」も説明できません。


少し心配になるのは、四半期開示が撤廃されて、半年開示に戻った場合、タカダ式操業度分析も損益分岐点分析も、使いものにならなくなるのではないか、という点です。

損益分岐点分析が使いものにならなくなるのは、説明するまでもないでしょう。

3期分や5期分の業績を用いて損益分岐点分析に取り組んだ場合、変動費率(【資料4】の∠DAC)は限りなく「1」、すなわち、100%に近づいていきます。


かつて、日本では、半期開示(6か月に1度の開示制度)が採用されていたことがありました。

半期開示では年に2回のデータしかとれないので、3期分(6個のデータ)や、5期分(10個のデータ)を並べて、損益分岐点分析に取り組んだことがありました。

どんなに工夫しても、【資料4】にある変動費率(∠DAC)が、95%〜97%にまで達してしまった事実を、紹介しておきます。


タカダ式操業度分析のほうはどうか。

たとえ四半期開示が撤廃されて、半期開示(半年開示)へ戻ったとしても、タカダ式操業度分析は、びくともしません。

3期分や5期分の業績を並べても、【資料3】にある点A → 点B → 点C → 点D → 点Eへと、企業活動は歩み続けます。

なぜか。
タカダ式操業度分析は、企業活動を、無限回数で連鎖する複利計算構造とみなしているからです。

それは、次の観察事実を根拠とします。
【資料5】
  • 製造業に勤務する人であれば、工場内の各工程を観察してみてください。

    • 工場内に無数に存在する工程に、材料費・労務費・経費を次々と投入していくと、無限回数の振り替え計算が行なわれていることがわかります。

    • 材料・仕掛品・製品などが入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 流通業に勤務する人であれば、店舗に置かれた商品を観察してみてください。

    • 日々仕入れた商品は、棚に補充したそばから、消費者へ次々と販売されていきます。

    • 膨大な商品が入庫と出庫を繰り返し、コストが徐々に膨張していく姿は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • 財務や経理に携われる人であれば、手元にある帳簿を観察してみてください。

    • 上場企業のような大規模組織になると、帳簿に記帳される仕訳の数は、1日で数百行や数千行にものぼります。

    • 振り替えの仕訳を含めれば、年間では数億行や数十億行の仕訳の数になります。

    • 入金と出金を無限回数で繰り返すその様は、無限で連鎖する複利計算を行なっていることと同じです。
  • 株式市場や仮想通貨市場を観察してみてください。

    • 人気が沸騰すればするほど、限りなくゼロに近い時間軸の中で、膨大な数の取引が行なわれます。

    • 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶその経済現象は、無限回数の複利計算を行なっていることと同じです。
  • マクロ経済の産業連関表を観察してみてください。

    • ある産業で生産された中間財は次の産業へ投入され、そこで生産された中間財は次の産業へと投入されていきます。

    • その流れは、マクロ経済レベルで、無限回数の複利計算を行なっていくことと同じです。

上記【資料5】で述べているように、企業活動の本質を「無限」に置いた場合、「短期の無限」と「長期の無限」を区別するのはナンセンス。
だから、四半期開示から半年開示になっても、タカダ式操業度分析は、びくともしないのです。

それに対し、政府の成長戦略は、「無限には、短期と長期の別がある」と考えているのでしょう。

だから、「四半期ごとに業績を開示する制度を見直す」という発想が生まれてくることになります。


今後、政府の見直しにより、四半期開示が撤廃されて、半期開示へ後戻りしたとしても、企業側の認識は変わらない、と私は予想しています。

その根拠は、【資料1】の分析結果が、すでに証明してくれました。


本コラムの最初のほうで、【資料1】の分析結果に理論背景がないのは残念だ、と述べました。

その分析結果を理論面で支えるのが、【資料5】の観察事実であり、【資料3】の図表であることを、ここで再確認しておきます。

こうした論旨をまとめたのが、次の受賞論文です。
【資料6】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

以上より、四半期開示を不要とする議論は、不要であることがわかります。

それよりも、【資料4】の損益分岐点分析(CVP分析)を得意気に振りかざす側の、「発想の貧困」を改めるほうが先でしょう。

それを改めずに、四半期開示を不要とするのであれば、こころして取り組むべし。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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