会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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制作著作 高田 直芳 公認会計士 税理士
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『会計学と原価計算の革新を目指して』
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執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
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zoom RSS 公認会計士高田直芳:内製が得か外注やM&Aが得か〜固定費の変動費化問題

<<   作成日時 : 2018/01/20 01:00   >>

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内製が得か、外注やM&Aが得か
〜固定費の変動費化問題〜



次の拙著の第18章から第20章までで、「戦術会計」というものを紹介しています。
決定版
ほんとうにわかる管理会計&戦略会計

高田 直芳 PHP研究所
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最初にお断りしておくと、上掲書は、2004年が初版であり、その後、2014年に第2版としています。

表紙に「第2版」と印刷されていないのは、出版のミスですが、第2版は確実に存在することを、最初に申し上げておきます。

話を戦術会計に戻します。

戦術会計というのは、管理会計 → 戦術会計 → 戦略会計、という流れの中で、真ん中に位置する会計です。

管理会計という体系に、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)や、NPV(正味現在価値)などの「時間軸」を盛り込んだのが戦略会計であり、そのうち、単年度という時間軸の中で「得か損か」を議論するのが、戦術会計です。

ちなみに、2年以上の複数年の時間軸を用いるのが、上掲書の表紙にもある戦略会計です。

戦術会計の例としては、「このまま社内加工(内製)を続けるべきか、それとも外部委託(外注・外製)にすべきか」という意思決定問題があります。
これは、単年度における意思決定です。

ほんとうにわかる管理会計&戦略会計』では、「カミサンが昼まで寝てる男」「汚ギャルと一緒に捕まった男」「乳首を噛まれた男」たちとともに、戦術会計や戦略会計を学ぶ構成になっています。


さて、今も昔も、コスト削減策として最も多く採用されているのが、「内製の外製化」です。

典型例としては、経理や総務などを、外部業者に委託するものをいいます。
アウトソーシングなどと、シャレて呼ぶことがあります。

外注費は変動費の典型ですから、「内製の外製化」は、「固定費の変動費化」と読み替えることができます。


内製か、外製か、で迷うとき、その判断基準となるのが、『ほんとうにわかる管理会計&戦略会計』第18章で説明している、機会原価、埋没原価、機会損失および機会利得という概念です。

このうち、機会原価は、経済学では「機会費用」と呼ばれています。

日本経済新聞で、過去1年間の記事を検索すると、機会損失は68件もヒットします。
機会原価(機会費用)や機会損失は、ビジネス用語として、すっかり定着しているといっていいでしょう。


人口に膾炙したともいえる専門用語を駆使して、「あれか、これか」を以下で検討してみることにします。

まず、内製する場合の機会原価と、外注した場合の機会原価とを比較し、どちらに機会損失が発生するかを、『ほんとうにわかる管理会計&戦略会計』第19章や第20章で説明している手順で計算します。

その結果、外製化を選択することになったとしましょう。

次に、内製していたときに抱えていた経営資源(ヒトやモノ)は、ことごとくリストラをする必要があります。
その多くは、埋没原価になります。


「内製の外製化」を選択してから、数年が経過しました。
着実に業績を伸ばしてきたかにみえて、「隣の芝生は青く見える」の喩えを持ち出すまでもなく、やがて外製化のデメリットが大きく見えてきます。

その1つは、「生殺与奪の権」を、外部業者に握られてしまうことです。
価格も数量も、業者の言いなりにならざるを得ない。
その屈辱が、機会損失として積み上がります。

売りたいときに売りたいものが手元になければ、販売機会の喪失という形で、機会損失はさらに膨れ上がります。

2つめは、自社の付加価値が大きく低下することです。
ライバル他社との差別化がなくなるので、薄利多売の消耗戦を強いられることになります。

「利益なき繁忙」というのは、自社に付加価値がないことから起きる現象です。


そこでもう一度、戦術会計を用いて検討したところ、外製化による機会損失が、想像以上に大きくなっていたとしましょう。
今度は、「外製の内製化」に戻る意思決定を下したとします。

内製から外製へ、そして再び、外製から内製へ。
振り子のように揺れ動く企業が、実務では非常に多く存在します。

ただし、いったん外製にしたものを、再び内製に戻す苦労は、並大抵のものではありません。
悔やむこと、悔やむこと。

これを「変動費化の失敗」といいます。


M&Aで一気に内製化を図る経営戦略もありますが、次の関連記事で説明したように、M&Aの半数は失敗します。
【資料1:関連記事グ】

「減損」というのは、M&Aの失敗による、機会損失の顕現化です。


「内製の外製化」にしろ、「外製の内製化」にしろ、企業はなぜ、意思決定の選択に失敗してしまうのでしょうか。

理由は、戦術会計の本質を、理解していない点にあります。
空理空論を操る者たちの、必然的な末路だともいえます。


戦術会計は、内製のほうがいいのか、外製のほうがいいのか、という意思決定の選択問題です。
これは、何を意味しているか、わかりますか。

数学的に説明するならば、ある曲線上の「接線の傾き」を求め、点Aにおける「接線の傾き」よりも、点Bにおける「接線の傾き」のほうが小さいぞ、だからこっちのほうが望ましい、という選択問題なのです。

「接線の傾きが小さい」ほど、「機会損失は小さい」という価値判断が働きます。

このように、内製がいいか、外製がいいか、という戦術会計の本質は、機会原価曲線と呼ぶべき曲線上の「接線の傾き」を求める分析道具だということです。


「変動費化の失敗」が起きたり、「減損処理」に追い込まれたりしてしまうのは、曲線の頂点がどこにあるのかを知らずに、曲線上の左側(内製の外製化)で騒いだり、右側(外製の内製化)で嘆いたりするからです。

最善の方法は、機会原価曲線そのものを描いて、その頂点を目指すことです。


では、機会原価曲線は、どうやって導かれるのか。

「接線の傾き」というのは導関数なのだから、導関数を「積分」すればいいことになります。

積分した結果、そこから得られる原始関数が、機会原価曲線になります。


となると、導関数や原始関数は、どのような方程式として表わされるのか。
この問題について、私は、企業価値というテーマで、導き出すことに成功しました。

例えば、借金を増やせば増やすほど企業価値を高めるケースがある一方で、借金を減らして自己資金で対応するほうがむしろ企業価値を高めるケースもあります。

他人資本(負債)と自己資本(手元資金)の間で、行ったり来たり彷徨(さまよ)う姿は、機会原価曲線上を、左へ行ったり、右へ行ったりするのと同じです。

そこで、この行ったり来たりする企業価値を、\(\displaystyle f(x)= \frac{D}{E} \) と表わします。
右辺の \(\displaystyle D \) は他人資本( \(\displaystyle {\rm Debt} \) )の頭文字であり、\(\displaystyle E \) は自己資本( \(\displaystyle {\rm Equity} \) )の頭文字です。

\(\displaystyle \frac{D}{E} \) という形が、いわゆる「DEレシオ」であることは、説明するまでもないでしょう。


D/Eレシオは導関数 \(\displaystyle f(x) \) ですから、これを次の (1) → (2) → (3) の手順で積分することによって、原始関数 \(\displaystyle F(x) \) を導くことができます。
【資料2】
\(\displaystyle \large f(x)= \frac{D}{E} \tag{1} \)
\(\displaystyle \large F(x) =\int f(x) dx =\int \frac{D}{E} dx \tag{2} \)
\(\displaystyle \large F(x)= \frac{\ln D - \ln (D + E)}{(1-t) \cdot r_{d}} + \frac{\ln E - \ln (D + E)}{r_{e}} + C \tag{3} \)
\(\displaystyle \large v= \frac{r_{e}}{r_{d} + r_{e}} \tag{4} \)

上記【資料2】(3)式が、「企業価値に関する一般公式」になります。
この(3)式を微分すると、「企業価値の実務解」を得ることができます。
それが、【資料2】(4)式になります。

上記【資料2】(3)式を微分すると、(1)式に戻るのではなく、(4)式になるのが面白いところ。
微積分する過程で、税効果会計の調整があるからです。


上記【資料2】の展開は、私(高田直芳)のオリジナルであり、これが「会計物理学の世界」です。
次の拙著などで、その内容を説明しています。
高田直芳の実践会計講座
「経営分析」入門

高田 直芳〔日本実業出版社〕
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企業価値を得意気に語る人たちは、御託宣を散々並べながら、結論は常に、「現在のところ、企業価値を求めるための一般公式や実務解はない」と結びます。
次の書籍65ページでも、そう述べられています。

一般公式や実務解が「ない」のではなく、知恵が「足りない」だけの話でしょう。

そんなことで、よくもまぁ、管理会計やファイナンスなどを語れるものです。


機会原価曲線(機会費用曲線)は、企業価値以外でも描かれます。
私が他に解いたものとしては、自己資本利益率ROEの機会原価曲線があります。

自己資本利益率ROEの本質は、「接線の傾き」なのだから、これを導関数として積分することが可能です。


内製か、外製か、を問うための機会原価曲線を求める解法も同じです。

ただし、内製と外製の機会原価曲線を求めるにあたっては、次の受賞論文にあるタカダ式操業度分析のノウハウが必要です。
なぜなら、「内製の外製化」は、「固定費の変動費化」を伴うから。
【資料3】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

内製または外製の機会原価曲線(機会費用曲線)を描くためには、固定費と変動費の分類が欠かせません。


その分類で有名な分析道具に、損益分岐点分析(CVP分析)があります。
これは大正デモクラシーの時代(1920年代)に編み出され、100年以上もの間、何とかの一つ覚えみたいに用いられてきました。

これだけの歳月があれば、損益分岐点分析に「理論上の瑕疵」があることくらい、誰かが気づきそうなもの。
上場企業の有価証券報告書などに損益分岐点分析を当てはめると、固定費がマイナスになるケースが続出するのに、誰も指摘してこなかった。

上記【資料3】の受賞論文で私が指摘するまで、誰も気づけなかったのだから、呆れてしまう。
【資料4:関連記事】

「あれか、これか」「どちらが得か」といった議論をしている人たちを見ていると、会計の世界はいまだに、大正デモクラシーから抜け切れていないことを思い知らされる。

これでは、戦術会計や戦略会計が、かわいそうではないか。
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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