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zoom RSS 公認会計士高田直芳:日本橋高島屋にまつわる投資回収期間のパラドクス

<<   作成日時 : 2018/05/03 01:00   >>

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日本橋高島屋にまつわる
投資回収期間のパラドクス



2015年5月2日付の日本経済新聞で、興味深い記事が掲載されていました。
【資料1】日本経済新聞2018年5月2日
  • 高島屋株 大改装に動揺
    日本橋 9月開業 投資回収期間に懸念

今回は、ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF)、正味現在価値法(NPV)、内部利益率法(IRR)などと並んでポピュラーな分析手法である、投資回収期間法に潜むパラドクスを扱います。

その前に、軽く露払い。
上掲記事では、次の記述がありました。
【資料2】日本経済新聞2018年5月2日

だがこの日示した2019年2月期の業績予想は連結営業利益が前期比15%減の300億円と9年ぶりの減益になるという内容だった。

これを機に日本橋SCに対する投資家の期待は失望に変わった。


上記【資料2】に登場する「投資家」とは誰なのでしょう。

マスコミの常套句の1つに、次の関連記事で紹介した「関係者の話によれば──」というのがあります。
【資料3:関連記事】

上記【資料2】の「投資家の期待」が、「関係者の話」によく似ていて、思わずニヤリ。


高島屋の「平成30年2月期 決算短信(連結)」の「連結業績予想」を見てみることにします。
確かに、通期の営業利益の予想は、前期比15.1%減の300億円とありました。

ところで、視線を左にずらして売上高の欄を見ると、1.2%増の、9190億円となっていました。
これら2つを組み合わせると、高島屋は増収減益を予想していることになります。

これのどこが、失望なのか。


増収減益とは、売上高が増加するにもかかわらず、利益が減少することをいいます。

「何を当たり前のことを」と思うかもしれません。

ところが、管理会計や経営分析などの専門家が、このニッポンだけでなく欧米を含めて100万人いるとするならば、そのうちの99万9999人は、増収減益を「図解」して説明することができないのです。

これは簡単に証明することができます。


彼ら(彼女ら)が、企業の業績予想を語るときは、次の【資料4】の図表を用います。
【資料4】CVP分析(損益分岐点分析)
画像

上記【資料4】では、実際の売上高が、中空に浮かぶ損益分岐点F(または横軸上の損益分岐点売上高G)を超えると、利益が無限に拡大していく様子を表わしています。

増収であれば必ず増益となり、減収であれば必ず減益となります。


ところが、上記【資料4】には、大きな欠点があります。
それは、増収増益や減収減益を説明することができても、増収減益や減収増益を図解できないことです。

そんなことはお構いなしに、管理会計や経営分析のテキストを開くと、【資料4】の図表は必ず掲載されています。

これを、99万9999人が利用する「何とかの一つ覚えのCVP分析」といいます。
【資料5:関連記事】

現在は、ヒトに代わって、人工知能AIが株式投資をする時代。
次の日経記事が、示唆に富む話を紹介しています。
【資料6】日本経済新聞2018年3月6日
  • AI投資は万能か(一目均衡)

    人工知能AIは「直近のデータの延長線上で次の展開を予想するため、長期的な相場トレンドの変化への対応が遅れがちになる。


1台の人工知能AIが「減益か?」と判断すると、他の人工知能AIはその延長線上で「売り時か?」と予想し、さらにその延長線上にいる他の人工知能AIが「売れ」と判断し、延長線上に群がっているすべての人工知能AIが「後れをとるな」とばかりに、一斉に売り浴びせる現象が起きることになります。

人工知能AIが手掛ける投資は、「一犬虚を吠ゆれば万犬実を伝う」に、よく似ています。

次の日経記事にある「イナゴタワー」や「フラッシュ・クラッシュ」は、それを暗示しています。
【資料7】
  • 日本経済新聞「DIGITALTREND」2018年1月16日

    突然、投資家が群がって株価が上がり、その後急落する現象は「イナゴタワー」と呼ばれる。

    特定の銘柄に集中的に買いを入れ、上昇が止まると売り浴びせる短期トレーダーを大群で飛んできては飛び去るイナゴに例えた表現だ。

  • 日本経済新聞「ネット台頭(5)」

    技術の進展が生んだ新たな金融取引がハイ・フリークエンシー・トレーディング(HFT)だ。コンピューターを駆使して過去の値動きを統計的に分析、1秒間に数千回もの高頻度売買を実行する。(略)

    市場に流動性を供給する半面、プログラムの誤作動などで一瞬にして価格が急落する「フラッシュ・クラッシュ」を招き、相場のかく乱要因にもなり得る。


人工知能AIが猛威を振るう中で、たった一人で始めたのが会計物理学。
そのキモとなるのが、次の「タカダ式操業度分析」です。
【資料8】タカダ式操業度分析
画像

上記【資料8】は、次の受賞論文の抜粋です。
【資料9】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

上記【資料8】では、実際の売上高が、損益操業度点B(横軸上の損益操業度売上高H)を超えると、増収増益となって、業績が拡大していくことがわかります。
上記【資料4】で、実際の売上高が、損益分岐点Fを超えた場合と同じです。

ところが、【資料8】のほうは、増収増益が無限に続くことを保証しません。

【資料8】にある最大操業度点D(最大操業度売上高K)を超えてもなお、実際売上高が増えていった(増収基調を続けた)場合、利益は一転して減少します。
これが、増収減益の正体です。


延長線上で群がる人工知能AIに、増収減益のカラクリはわかるまい。
ましてや、上掲【資料1】の記事にもあるように、人工知能AIの投資術に追いつけないヒトでは、増収減益の意味すら理解できまい。

増収減益って、売上高が増えているのに、利益が減ることなんですよ。
上記【資料4】のCVP分析(損益分岐点分析)を操る諸君、それがわかっていますか?
【資料10:関連記事】

話を戻して、日本橋高島屋。
同社の株価が下落したのは、減益という一事に対して、人工知能AIが一斉に反応したのかもしれません。

いや、高島屋の業績が本当に悪化すると、人工知能AIは本当に読み切ったのか。

その真相を探り当てることができる判断材料の1つが、冒頭に示した投資回収期間という分析手法です。
企業実務では、NPVやIRRよりも重宝されています。

黒字になる時期が早い案件ほど、予算を獲得しやすい、という思惑があるようです。


投資回収期間をどのように算出するかについては、次の拙著553ページ以降を参照。

上掲書は2014年に改訂を行ない、現在は第2版としています。


上掲書553ページ以降の分析手法に従って、投資回収期間が、例えば5年と見積もられたとしましょう。

そこで質問です。
5年後に黒字となる成功確率は、何パーセントか、わかりますか。

驚くなかれ、答えは、ゼロです。


なぜ、ゼロかというと、投資回収期間を用いた分析手法には、確率論や統計学のノウハウが内蔵されていないからです。

投資回収期間というのは、1年ごと、半年ごと、四半期ごとに「とびとびに計算」して、「ある1点」を求めるものであり、これを離散型といいます。

0から1までの実数の並びの中で、ある1点を選択する確率はゼロなのです。
百歩下がって有理数だとしても、その中から、ある1点を選択する確率は、やはりゼロなのです。


離散型に対応するものとして、連続型というのがあります。

連続型の場合は、5年後という1点に絞るのではなく、例えば4年9か月から5年3か月まで連続した幅(6か月間のスパン)を想定することになります。
これなら、成功確率は、10パーセントくらいにまでは高まるかも知れません。

例えば、4年6か月から5年6か月まで連続した幅(12か月のスパン)へ広げると、成功確率は50パーセントくらいにまで高まるかも。

いや、同じ12か月のスパンでも、4年11か月から5年11か月までの幅のほうが、成功確率は75パーセントくらいにまで高まるのかもしれません。

いえいえ、1年から9年まで連続した幅(8年間のスパン)へと広げたほうが、成功確率は95パーセントになるかもね。

これが、連続型を採用した場合の投資回収期間です。

でも、これって、どこか、おかしい。
月や日を単位とする限り、連続型だといいながら、結局、離散型確率変数にとどまっているのだから。


以上の説明に納得がいかない最大要因は、次の関連記事で説明した機能が、投資回収期間に内蔵されていない点にあります。
【資料11:関連記事】

中心極限定理などの視点を欠いた状態で、成功確率を高めようとするならば、スパンを無限に広げていくしかない、という矛盾を抱えることになります。

そうなってくると、これはもう、次の関連記事で説明した「NP完全問題」となり、人工知能AIと量子コンピューターを駆使して、無限に存在するものの中から、1つの解を探り当てていくしかない。
【資料12:関連記事】

「無限」という表現に、デジャブ(既視感)はありませんか。

そうです。
上記【資料4】のCVP分析(損益分岐点分析)と、根っこが同じなのです。

管理会計や経営分析を語らせれば何とかの一つ覚えみたいにCVPを操る人たちには、「無限の利益拡大」というループが待ち構えています。
それを解決するには、CVP分析の中で、NP完全問題を解く必要がある。


それって、どこか、おかしい。

CVP分析という「無限ループ」の中で喘ぐのではなく、そこから一歩踏み出して発想を転換させれば、NP完全問題に頼ることなく、解ける問題があることに気づくべきでしょう。

正面切って、NP完全問題を解くだけが能じゃない。

上記【資料8】のタカダ式操業度分析に、タカダ式確率微分方程式を融合させれば解ける問題もある。
井の中で吠えているカワズには、わからない話でしょうけれどね。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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