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zoom RSS 公認会計士高田直芳:朝鮮半島の非核化とコースの定理と日米韓の機会損失

<<   作成日時 : 2018/06/14 01:00   >>

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朝鮮半島の非核化と
コースの定理と
日米韓の機会損失



別に、国際政治の問題を持ち出そうというのではありません。

今回は、2018年6月14日付の日本経済新聞『中外批評』に触発され、ルールよりもディール(取引)に重きを置く米国トランプ大統領に関連した話題です。

朝鮮半島をめぐる「ディール」に、経済学で有名な「コースの定理」がピタリと当てはまるので、それを以下で解説してみようという趣向です。

さて、上掲の『中外批評』に関連した記事として、次のものがありました。
【資料1】日本経済新聞2018年6月14日

政府は米朝首脳会談を受け、北朝鮮との協議を探る。北朝鮮への経済協力が交渉カードだ。

支援は3つの段階で準備する。一つは国際原子力機関(IAEA)による核査察費用、もう一つが人道分野、最後は経済協力だ。


上掲記事で注意すべき点は、次のとおり。
【資料2】
  1. 費用負担は、日本と韓国が負うべきこと。

  2. 米国や北朝鮮は、費用を負担しないこと。

  3. 上記【資料1】にある交渉カードを「取引費用」といい、これが機会原価(機会費用)を上回る場合、朝鮮半島の非核化は失敗する可能性があること。

「なぜ、ニッポンが、巨額の資金を負担してまで、尻ぬぐいをせねばならぬのか」と不満の声が出そう。

ニッポン国内の反対派を説得する理論が、1991年にノーベル経済学賞を受賞した「コースの定理」です。


コースの定理は、次の経済学書すべてで取り上げられているように、非常に有名な理論です。
マンキュー経済学 Iミクロ編
N.グレゴリー マンキュー
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クルーグマン ミクロ経済学
ポール クルーグマン
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スティグリッツ ミクロ経済学
ジョセフ・E. スティグリッツ
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『マンキュー』302ページと『クルーグマン』593ページは、ご近所トラブルの例で説明しているので、少々わかりづらい。

以下では『スティグリッツ』を拝借。
その548ページでは、次のように説明されています。
【資料3】スティグリッツ・ミクロ経済学』548ページ

コースの定理によれば、所有権を適切に定義しさえすれば、政府の直接的介入を待つことなく、市場は外部性の問題を解決することができるのである。


上記【資料3】にある「政府」は米国や国連であり、「市場」は朝鮮半島と日本列島に読み替えます。

続いて549ページでは「愛煙家と嫌煙家の間で利害の対立がある場合」に、コースの定理で解決する方法が示されています。
【資料4】スティグリッツ・ミクロ経済学』549ページ

嫌煙家にとっての清浄な空気の価値が愛煙家の喫煙の価値を上回れば、嫌煙家は愛煙家に十分な補償を支払って愛煙家に喫煙をやめるように求めることができるだろう。


上記【資料4】にある「価値」を、管理会計の世界では「機会原価」といい、経済学では「機会費用」といいます。
この価値を上回った部分を「機会利得」といい、下回った部分を機会損失といいます。

機会原価や機会損失などの概念については、次の関連記事で説明しました。
【資料5:関連記事】
  1. 超過利潤と機会費用と損処理と機会損失と
  2. 事業臨界点ではなく機会費用ゼロ点
  3. 機会損失と得べかりし利益 〜定性分析と定量分析
  4. 体系なき会計学 実証なき経済学

詳細な説明を探すのであれば、次の拙著438ページ以降を参照。

特に注意したいのが、機会原価(機会費用)。
これは【資料5:関連記事】2. に掲載した図表の、黒色の直線と赤色の曲線とで囲まれた「上弦の面積」で計算されます。


取引費用についても注意が必要。
そのすべてを負担するのは、ニッポンと韓国です。
シンガポールの滞在費さえ支払う余裕のない国に、取引費用は払えません。

取引費用を負担する義務の大半は北朝鮮にある、などと主張する人は、「経済のイロハ」を理解していない。
行動経済学などを用いたマーケティングに、ころりと騙されることでしょう。

最悪の場合、ニッポンが取引費用の全額を負担することを覚悟したほうがいいくらいです。

この取引費用が「上弦の面積」よりも大きい場合には、機会損失が発生するので、「コースの定理」が成立せず、「朝鮮半島の非核化」という取引は、失敗に終わります。

失敗するプロセスについては、『マンキュー・ミクロ経済学』304ページを参照。


スティグリッツ・ミクロ経済学』では、コースの定理が成立する条件は、かなり限定的なものであることが説明されています。
【資料6】スティグリッツ・ミクロ経済学』551ページ

というのも、当事者間での合意に到達するための費用は高くなる可能性があり、とりわけ多くの個人がかかわる場合にはその費用は高額になりがちだからである。


コースの定理が成立せず、交渉が失敗した場合、米国はニッポンに肩入れしてくれるのかどうか。

これについては『マンキュー・ミクロ経済学』305ページに、そのヒントが記述されています。
【資料7】マンキュー・ミクロ経済学』305ページ

民間での契約が機能しないとき、政府がその役割を果たすこともある。

政府は、集団的な行動を設計する組織である。

この例では、たとえ漁師が自分たちのために行動することが現実的でないとしても、政府は漁師たちのために行動することができる。


上記【資料7】にある「漁師」は日本と韓国であり、「政府」は米国です。

「米国第一主義」を掲げる人物が、集団的な行動を設計し、極東の漁師たちのために行動するとは、到底考えられないですよねぇ。
〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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