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zoom RSS 公認会計士高田直芳:最適資本構成の過去問で言葉遊びに興じる人たちがいる

<<   作成日時 : 2018/07/04 02:00   >>

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最適資本構成の過去問で
言葉遊びに興じる人たちがいる



先日、書店で過去問題集を見ているとき「う〜ん、これはヒドイ……」と呆れ返ってしまったのが、資本構成に関する問題。

毎年のように出題されていながら、そのすべてが文章題だけで作問されている事実に絶句。

資本構成というのは「資本」と名が付くことからわかるように、他人資本と自己資本との構成割合を求めるもの。

貸借対照表を勘定式で作成した場合、他人資本は右上に、そして自己資本は右下に配置されます。

同時に、損益計算書に計上される資本コスト(営業外損益や配当)を組み合わせて、加重平均資本コスト率WACCを求め、これをベースに他人資本と自己資本の構成割合を求めるのが、最適資本構成またはMM理論と呼ばれるものです。

したがって、具体的な決算書を問題文に掲載して、受験生に具体的な数値を求めさせるのが、企業実務に役立つ問題であるはず。

ところが、書籍に掲載されている過去問は、そのすべてが文章題だけで構成され、適切な一文を選ぶだけのものばかり。
これが毎年のように出題されている。

そして解説の終わりは、決まって次の文で結ばれています。
【資料1】

現在の通説では、最適資本構成に関する一般公式や実務解はない。


これでは企業実務に役立つものとはいえず、文字通り「言葉遊び」の世界。
「こいつは、ひどい……」と呆れ返る私の心情を察して欲しいものであります。


先ほど、加重平均資本コスト率WACCを紹介しました。
これは次の(1)式で表わされます。
\[\displaystyle \large
{\rm{WACC}}= \dfrac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \dfrac{E}{D + E}r_{e} \tag{1}
\]\begin{eqnarray}
D &:& {\rm{他人資本(負債の部)}} \\
E &:&{\rm{自己資本(株主資本)}} \\
t &:& {\rm{法定実効税率}} \\
r_d &:& {\rm{他人資本コスト率(負債コスト率)}} \\
r_e &:& {\rm{自己資本コスト率(株主資本コスト率)}} \\
\end{eqnarray}

上記(1)式は、書店に並ぶ書籍で頻出するものなので、説明を要しないでしょう。

問題は、これ以降にあります。
すなわち、作問者たちは上記(1)式で満足してしまい、あとは「一般公式や実務解はない」で締めくくる。

それが過去問題集に、毎年、文章題だけが掲載されている理由です。


では、(1)式から先を、どうするか。
学者が解決しないのであれば、実務家が解決するしかありません。

上記(1)式を \(\displaystyle \large f(x) \) と置いて、これを積分すると、加重平均資本コスト率の原始関数 \(\displaystyle \large F(x) \) を得ることができます。
それが次の(2)式です。
\[\displaystyle \large F(x)= \dfrac{\ln D - \ln (D + E)}{(1-t) \cdot r_{d}} + \dfrac{\ln E - \ln (D + E)}{r_{e}} + C \tag{2} \]
( \(\displaystyle \large C \)は積分定数)

上記(2)式を微分すると、次の一般公式を得ることができます。
\[\displaystyle \large x= \frac{r_e}{r_d + r_e } \tag{3} \]

例えば、他人資本コスト率を \(\displaystyle \large r_d= \)1% とし、自己資本コスト率を \(\displaystyle \large r_e= \)10% とした場合で、これらの数値を上記(3)式に代入します。

その結果、 使用総資本に占める他人資本の構成割合は \(\displaystyle \large x= \)90.9% (自己資本の構成割合は \(\displaystyle \large x= \)9.1% )となります。

これが資本構成の実務解です。


現在のような低金利時代であれば、他人資本コスト率は 0.5%前後で設定したほうがいいかもしれません。
自己資本コスト率については、目標ROEを採用したほうがいいでしょう。

例えば、他人資本コスト率を \(\displaystyle \large r_d= \)0.4% とし、目標ROEを \(\displaystyle \large r_e= \)8% として、これらの数値を(3)式に代入した場合、 使用総資本に占める他人資本の構成割合は \(\displaystyle \large x= \)95.2% (自己資本の構成割合は \(\displaystyle \large x= \)4.8% )にまで高まります。


上記(3)式は、使用総資本に占める、他人資本と自己資本それぞれの割合を求める式です。

他人資本と自己資本を直接組み合わせた、いわゆるDEレシオから導かれる一般公式も、(2)式の原始関数から導くことができ、それは次の(4)式になります。
\[\displaystyle \large x=\frac{r_e}{r_d} \tag{4} \]

上記(3)式や(4)式は、次の関連記事で、公式集としてまとめてあります。
【資料2:関連記事】

以上が低金利時代における資本構成の実務解。
言葉遊びに興じている人たちに、(2)式以降は、まったく理解不能な展開です。

そうした彼ら(彼女ら)に、次の言葉を進呈しましょう。
【資料3】日本経済新聞電子版2014年8月23日付
    「数字の裏づけのない資料の価値は、ゼロに等しい」

    孫正義ソフトバンク社長


次の関連記事では、上場企業の過半数が、実質無借金である事実を紹介しました。
【資料4:関連記事】

これだけ長く低金利が続く時代では、使用総資本に占める他人資本の構成割合が高まることはあっても、自己資本の構成割合のほうが高まることはあり得ない。

それにもかかわらず、実質無借金の企業が増加の一途にあって、企業経営者が「のほほん」としていられるのは、資本構成の問題が文芸評論に堕している証左です。

上記【資料4:関連記事】で紹介した日本経済新聞の記事が指摘するように、それがニッポン経済の停滞に繋がるのだとしたら、その責任は、実務で役立たない文章題を作り、それを嬉々として解いている人たちにある。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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