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zoom RSS 公認会計士高田直芳:M&Aで巨額の減損損失が突如として表面化する理由

<<   作成日時 : 2018/09/15 01:00   >>

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M&Aで巨額の減損損失が
突如として表面化する理由



2018年9月14日付の日本経済新聞では、「国際会計基準(IFRS)を策定する国際会計基準審議会(IASB)が、企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したこと」を紹介していました。
【資料1】日本経済新聞2018年9月14日付
  • M&A「のれん」費用計上検討 買収額の上乗せ分
    日本勢 14兆円減益要因。

  • のれん償却 国際会計基準でも検討
    欧米は定期計上に距離 業績影響軽減の思惑。

  • のれん 見えない資産の対価(きょうのことば)

上掲記事では、のれんに関する解説記事や、国際会計基準審議会議長へのインタビュー等が掲載されていました。

ただし、どのような見解が述べられようとも、M&A(買収と合併)の問題意識は、次の一文に集約されます。
【資料2】日本経済新聞2018年9月14日付

近年は突如として損失が表面化するケースも多い。


う〜ん、上記【資料2】の問題意識をもって、【資料1】の日経記事を読み返すと、ちぐはぐな印象があります。

以下で整理してみましょう。


まず、上記の日経記事にある「企業買収を巡る会計処理」は、次の3つに分類されます。
【資料3】
  • 第1のコスト:損益計算書に計上する費用

  • 第2のコスト:貸借対照表に計上する費用

  • 第3のコスト:数年後に、突如として発生する損失

IFRS基準(米国基準を含む)と日本基準との相違が、「第2のコスト」にあることは、【資料1】で説明されています。

その「第2のコスト」を計算するにあたっては、次の会計処理方法があります。
【資料4】
  1. インカム・アプローチ
    • フリー・キャッシュ・フロー法
    • 正味現在価値法
    • 残余利益法
    • 配当還元法
    • 収益還元法
  2. マーケット・アプローチ
    • 市場株価法
    • 類似取引法
    • 取引事例法
    • 簿価純資産法
    • 時価純資産法

上記【資料4】は、次の関連記事でも紹介しました。
【資料5:関連記事】

IFRS基準や日本基準で議論されているのは、第2のコストを計上した「後」に、償却するかどうか、にあります。


しかし、M&Aにおいて認識すべき最大の問題は、【資料2】であったはず。

第2のコストを計上する「前」に──、というか、水面下で何らかの問題が起きており、それが第3のコストとして表面化する──。

すなわち、第2のコストを計上するための、【資料4】の計算方法そのものに「瑕疵があるのではないか」と疑うべきなのです。


上記【資料4】すべてに共通する問題点として、次の2点を指摘します。

1つめは、【資料4】はそのすべてが、1年365日(閏年を考慮しません)のうち、たった1日を基準としている点にあります。
残り364日間の企業活動が、まったく考慮されていない。

専門的な表現をするならば、「とびとびの複利計算」または「とびとびの年金現価計算」だということです。


ところが、現実の企業活動を観察すると、次の受賞論文で指摘したように、「日々複利の連鎖構造」を有していることがわかります。
【資料6】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

365日のうち364日を仮死状態としている【資料4】の方法では、そりゃあ、巨額の損失が突如として現われるのも仕方がない。
【資料7:関連記事】

2つめは、【資料4】ではそのすべてで、確率論や統計学のノウハウが加味されていないことです。

M&Aは、将来を見越して仕掛けるもの。
その将来は、不確定・不確実に満ち溢れています。

それを測定するためには、次の関連記事でも指摘しているように、標準偏差を内蔵した確率微分方程式を駆使したものでなければならないはず。
【資料8】

IFRS基準と日本基準との間で、償却の是非を議論するのは、第2のコストへの対症療法にすぎない。

日経記事も【資料2】で指摘し、誰もがその問題を認識しているはずなのに、「第3のコスト」にまで議論を進めないのは、どうしたことか。


こうした「ちぐはぐさ」を生む原因については、次の3点を指摘することができます。

1つめは、会計には、財務会計と管理会計という2分野があり、IFRS基準や日本基準は財務会計の世界の話だということ。

そして、財務会計では、第1のコストと第2のコストが、その射程範囲になることです。

一方、第3のコストは、管理会計の射程になります。
これが「ちぐはぐ」の原因です。
【資料9:関連記事】

財務会計の射程範囲である【資料4】の計算式を見比べていると、ある共通点が浮かび上がります。

そのすべてが、中学生の算数で組み立てられていること。
高等数学のノウハウが、まったくない。
これが2つめの問題点。

住宅と同じように、M&Aでも十年保証の特約を付けるようにすれば、アドバイザーたるコンサルティング会社も、もう少し真剣になって、第3のコストを精査した企画書を作成するのではないか、と考えています。
【資料10:関連記事】

カラーで印刷された企画書の見栄えや、プレゼンテーションの滑舌に、どれだけの企業が幻惑されていることか。


3つめは、第3のコストを議論すべき管理会計の、そのレベルの幼稚さです。

現在の管理会計論・経営分析論で、M&Aに関して微分積分や標準偏差を駆使して説明した専門書や学術論文は、1冊も1本も見あたらない。

M&Aに関して、明確な処方箋を提示できない管理会計論の怠慢が、突如として損失を表面化させる原因となっていることにも注意したい。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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