会計物理学&会計雑学講座公認会計士高田直芳

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制作著作 高田 直芳 公認会計士 税理士
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新日本法規財団 奨励賞 受賞論文 (PDF 32枚)
『会計学と原価計算の革新を目指して』
執筆者(受賞者)公認会計士 高田 直芳
日本公認会計士協会 研究大会 発表論文 (PDF 12枚)
『管理会計と原価計算の革新を目指して』
執筆者(発表者)公認会計士 高田 直芳
上記研究大会のパワーポイント資料は、こちら。
関東信越税理士界『論陣』掲載論文(PDF 3枚)
『有償支給取引と循環取引に内在する
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執筆者 税理士 高田 直芳

zoom RSS 公認会計士高田直芳:ROEやWACCを微分積分するノウハウを持たずに何を語るべき

<<   作成日時 : 2018/09/02 01:00   >>

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ROEやWACCを微分積分する
ノウハウを持たずに
何を語るべき



「こいつは、ちょっと中途半端だなぁ」と小首を傾げてしまったのが、次の記事。
【資料1】日本経済新聞『大機小機』2018年8月28日

そのときの重要な判断基準は、事業単位ごとに投下されている資産が資本コストを上回る税引き後営業利益をあげているかどうかである。

しかし、資本コストについては明確に認識していない企業が多い。

企業活動の資金調達は自己資本(資本金と剰余金)と他人資本(社債や借入金)で行われる。資本コストはこれらの加重平均値である。


上掲記事の箇所は、用語の定義づけをしているだけなので、このままでいい。
問題は、この記事の後半にあります。
【資料2】日本経済新聞『大機小機』2018年8月28日

ファイナンス理論では様々な推計方法があるが、これをコストとして明確にしている企業はまだ少数ではないか。(略)

ROAが資本コストを上回れば企業価値は増大する。企業経営ではROAを高めるのが重要で、資本コストを上回るROAの目標値を設定すべきだ。

そこから最適資本構成としての財務レバレッジを考慮してROEの目標値が決まる。


上記【資料2】にある、ROA、ROEおよび財務レバレッジの三者関係については、次の関連記事を参照。
【資料3:関連記事】

ところで、上記【資料2】では「様々な推計方法がある」としています。
しかし、私の知る限りでは、次の2種類しかないはず。
【資料4】

〔A説〕推計方法に関して、一般公式や実務解は今のところない。

〔B説〕推計方法に関して、一般公式や実務解はある。


私以外の学者や専門家たちは全員、【資料4】の〔A説〕を採用しています。
その証拠は、次の書籍の64ページに記述されています。

ウィキペディアでも、同旨が言及されています。
【資料5】ウィキペディア『MM理論』

MM理論が公表されて以来、最適資本構成に関する一般公式や実務解が未だに提示されておらず、研究論文などでは「実務での検証が望まれる」といった結びが多い。


上記【資料5】のウィキペディアにある「最適資本構成」と、【資料2】の日経記事にある「最適資本構成」とは同じものです。


推計方法が「ない」のだから、【資料2】にある「これをコストとして明確にしている企業はまだ少数ではないか」という指摘は、半分正しい。

もし、一般公式や実務解には「様々なものがある」と主張する人がいるならば、その人物は、ファイナンス理論を学ばずに、ファイナンスを得意気に語っていることになります。

ファイナンスとは、何と恐ろしい世界でしょう。


次の関連記事でも、ファイナンス理論を学ばない人が「合成の誤謬」などという、誤った結論を述べていることに警鐘を鳴らしました。
【資料6:関連記事】

一番の問題点は、大メディアの言をそのまま妄信してしまう読者の側にあるのでしょうけれど。


では、上記【資料4】の〔B説〕を、唯一人だけ主張する私は、どのような推計方法を持っているか。

まず、【資料1】に「資本コストはこれらの加重平均値である」とあります。
これは加重平均資本コスト(\(\displaystyle Weighted \ Average \ Cost \ of \ Capital \)、略して \(\displaystyle WACC \) )のことであり、次の(1)式で表わされます。
\[\displaystyle
WACC = \frac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \frac{E}{D + E}r_{e} \tag{1}
\]\[\displaystyle \begin{eqnarray}
D &:& {\rm{他人資本(負債の部)}} \\
E &:&{\rm{自己資本(株主資本)}} \\
t &:& {\rm{法定実効税率}} \\
r_d &:& {\rm{他人資本コスト率(負債コスト率)}} \\
r_e &:& {\rm{自己資本コスト率(株主資本コスト率)}} \\
\end{eqnarray}
\]

上記(1)式を導関数 \(\displaystyle \large f(w) \) とし、その原始関数を \(\displaystyle \large F(w) \) とすると、次の(2)式から、(3)式と(4)式を経て、(5)式まで展開することができます。
\[\displaystyle
f(w) = \frac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \frac{E}{D + E}r_{e} \tag{2}
\]\[\displaystyle
F(w) =\int f(w) dw \tag{3}
\]\[\displaystyle
F(w) = \int \left( \frac{D}{D + E} (1-t) \cdot r_{d} + \frac{E}{D + E}r_{e} \right) dw \tag{4}
\]\[\displaystyle
\therefore F(w)= \frac{\ln D - \ln (D + E)}{(1-t) \cdot r_{d}} + \frac{\ln E - \ln (D + E)}{r_{e}} + C \tag{5}
\]
( \(\displaystyle \large C \) は積分定数)

(5)式までくれば、あとひと手間。

上記【資料2】の日経記事に「企業価値」というのがあります。
これを \(\displaystyle \large V(=Value) \) と置いて、上記(5)式をこの \(\displaystyle \large V \) で微分すると、次の(6)式を得ることができます。
\[\displaystyle \large
V= \frac{r_{d}}{r_{d} + r_{e}} \tag{6}
\]

上記(6)式が【資料4】の〔B説〕にいう「一般公式」です。
\(\displaystyle \large D \)、\(\displaystyle \large E \)、\(\displaystyle \large t \) などが、すべて消えてしまうのが楽しい。

この式において、\(\displaystyle \large r_d = 1% \)、\(\displaystyle \large r_e =9% \)と仮定すると、\(\displaystyle \large V=10% \)。
使用総資本を1000億円と仮定すると、目標とすべき自己資本は100億円になります。


ところで、こうして求めた「目標自己資本」と、ROEや企業価値との間には、次の関係があります。
【資料7】
  • 実際の自己資本が、目標自己資本よりも少ない場合、ROEは低下し、企業価値は減少します。

  • また、実際の自己資本が、目標自己資本より多い場合も、ROEは低下し、企業価値は減少します。

加重平均資本コストを観念的に解説する書籍で、U字型の図表を見たことがある人がいるかもしれません。

上記【資料7】は、それを表現しています。


そうした机上の空論に終始する書籍など、うっちゃっておいて、先へ進みます。

上記【資料2】にある財務レバレッジとは、実際の自己資本を、目標自己資本(100億円)に近づける財務活動をいいます。

そのレバレッジを働かせながら、上掲の日経記事にある「事業単位ごとの税引き後営業利益」を稼ぐことが、企業価値を増大させることになる──、というのが「ほんとうの実務解」です。

以上が、【資料4】の〔B説〕にある一般公式と実務解の説明なのでした。


「会計に経済学は必要ない」と嘯(うそぶ)く連中には、こうした説明は理解できないだろうなぁ。
【資料8:関連記事】

私(高田直芳)は実務家であり、税金を原資とした俸給や補助金を受けて、ぬくぬくと暮らしているわけではないので、(6)式までの解法を具体的に開示することはありません。


そもそも、(5)式にある \(\displaystyle \large \ln \) 関数まで、誰も辿りつけまい。

\(\displaystyle \large \ln \) とは、自然対数のこと。
フランス語の“ \(\displaystyle \large Logarithme Naturel \) ”の略称です。

\(\displaystyle \large \ln x \) と \(\displaystyle \large \log x \) の違いについては、次の関連記事を参照。
【資料9】

企業活動には、この自然対数が内蔵されていることを、次の受賞論文を読み解くことから始めたほうがいい。
【資料10】
新日本法規財団 奨励賞 受賞論文
『会計学と原価計算の革新を目指して』(PDF32枚)
執筆者(受賞者)公認会計士 高田直芳


日本公認会計士協会 研究大会 発表論文
『管理会計と原価計算の革新を目指して』(PDF12枚)
執筆者(発表者)公認会計士 高田直芳

高校のときに学んだ「数学VC」のレベルでは、上記の受賞論文1ページ目を読むのがやっと、といったところ。

本ブログで展開している「会計物理学の世界」を理解するには「数学WD」のノウハウが必要です。

数学や経済学を軽んじる連中が、上場企業やコンサルティングファームなどで跳梁跋扈するから、資本コストを明確に認識していない企業が多い、という日経記事の指摘は、やはり、半分正しいというべきでしょう。

〔文責 高田直芳 税理士 公認会計士〕
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